
環境管理とは、組織が環境への負荷を継続的に改善していくための活動をPDCAサイクル(図1)に基づいて実行することをいいます。
PDCAサイクルとは、P(PLAN)計画をたて、D(DO)計画を実行し、C(CHECK)実行結果を計画と比べどれだけ達成できたかを確かめ、A(ACTION)CHECK結果をもとに是正措置・予防措置を実行することをいいます。
具体的にいうと、環境管理活動は次のような手順で行われることになります。
(1)環境に対してどのような影響が過去に発生したか、現在発生しているか、今後発生する可能性があるかを洗い出します。
(2)洗い出された環境影響に基づいて、組織の環境管理活動に関する基本的な枠組みである「環境方針」を作成します。
(3)「環境方針」に基づいた環境管理の到達点である「環境目的」を作成します。
(4)「環境目的」を達成するために環境管理活動の要求事項である「環境目標」を作成します。
(5)「環境目標」を達成するための具体的な活動計画(以下計画といいます。)を作成します。
(6)計画を実行します。
(7)計画を実行した結果を把握します。
(8)実行した結果と計画とを比較し、計画の達成状況を把握します。
(9)実行した結果と計画との差異が発生した場合には、差異原因を調査します。
(10)環境に対する影響状況の変化を把握して、環境負荷を減らす計画を作成します。
(11) (1)から(10)を継続的に実行していくことにより、環境負荷を継続的に改善していきます。
参考までに、環境管理システムの国際規格であるISO14001の規格の仕組みを図2として示しておきます。なお、図中における数字は規格の要求事項の番号です。
ISO14000を説明する前に、ISOについて簡単にお話したいと思います。
ISOとは、国際標準化機構(International Organization for Standardization)のことです。
国際標準化機構の略称が、「ISO」で通称アイソ、イソ、アイエスオーと呼ばれています。
ISOは、1947年に設立された世界共通の規格等の設定を行うスイス民法に基づく民間の組織です。
その設立の目的は、「商品とサービスの国際的な交換を容易にし、知識、科学、技術、経済に関する活動において、国際的な交流を助長するため、国際的な規模の標準化とこれに関するさまざまな活動を発展、促進すること」でした。
この目的のもと、ISOでは、これまでに約1万件近くもの規格を発行してきており、
規格の中には、フィルムの感度のような「製品の規格」と、「経営管理組織や管理制度に関する規格」があります。
現在「経営管理組織や管理制度に関する規格」は、ISO9000シリーズ、ISO14000シリーズのみとなっています。
ISO14000シリーズが作成されることになったきっかけは、1992年の地球環境サミットに向け、「持続可能な発展のための産業会議(BCSD)」が国連環境開発会議(UNCED)への提言を議論する中で、環境パフォーマンスの国際規格が必要と考えられ、ISOにその検討を要請したことです。
ISOは、この要請を受けて、国際電気標準会議(IEC)とともに、環境戦略諮問委員会(SAGE)を設置して検討した結果、ISOの理事会に環境管理に関する規格を作成する専門の技術委員会(TC)の設置を勧告しました。
この結果、1993年に環境管理に関する専門の技術委員会(TC207)が設置され6つの分科会を作って、各国の専門家が「環境に関するツールとシステムの標準化」のための検討を行うことになったわけです。
このTC207で検討されている環境管理に関する規格の総称がISO14000シリーズです。
ISO14000シリーズは、「環境管理システム」、「環境監査」、「環境パフォーマンス評価」、「ライフサイクルアセスメント」、「環境ラベリング」からなります。
参考までに「ISO14000シリーズの体系」を、図に示しておきます。
ISO14000シリーズの体系
番号体系
環境管理システム
※14001 環境管理システム:仕様及び利用の手引き 14004
環境管理システム:原則、システム及び支援技法の一般指針 番号体系
環境監査
14010
環境監査指針:一般原則 14011
環境監査指針:監査手順 14012
環境監査指針:環境監査員の資格基準 番号体系
環境パフォーマンス評価
14031
環境パフォーマンス評価の指針 番号体系
ライフサイクルアセスメント
14040
ライフサイクルアセスメント:一般原則と枠組み 14041
ライフサイクルアセスメント:ライフサイクルイベントリー解析 14042
ライフサイクルアセスメント:ライフサイクル影響評価 14043
ライフサイクルアセスメント:ライフサイクルインタプリテイション 番号体系
環境ラベリング
14020
環境ラベリング:全ての環境ラベリングに対する基本原則 14021
環境ラベリング:自己宣言による環境主張 :用語と定義
14022
環境ラベリング:自己宣言による環境主張 :記号
14023
環境ラベリング:自己宣言による環境主張 :試験とその方法論
14024
環境ラベリング:指針の原則、実際及び認証プログラム :認証手順のための指針
- のみが、認証取得の対象となる規格です。
各々の規格につき、概要を説明しますと次のとおりです。
(1) 環境管理システム
ISO14001は、環境管理システムの仕様(スペック)で守らなければならない要求事項について規格化しています。
ISO14004は、環境管理システムの全般的な指針(ガイドライン)について規格化しています。
(2) 環境監査
ISO14010は、環境監査の一般原則について規格化しています。
ISO14011は、環境監査の手順について規格化しています。
(3) 環境パフォーマンス評価
組織が環境に与える影響を測定、分析、評価する方法であり、ISO14031で規格化される予定です。
(4) ライフサイクルアセスメント
製品の設計から廃棄まで、いわゆるゆりかごから墓場までの環境影響を評価し、環境影響を最小化するための手法であり、14040〜14043番で規格化される予定です。なお、各規格の予定内容は次のとおりです。
ISO14040は、ライフサイクルアセスメントの一般原則と枠組みについて記述される予定です。
ISO14041は、ライフサイクルインベントリー分析について記述される予定です。
ISO14042は、ライフサイクル影響評価について記述される予定です。
ISO14043は、ライフサイクル改善評価について記述される予定です。
(5) 環境ラベリング
環境ラベリングは、製品の環境への影響度合い等をラベルを通して消費者に伝え、環境にやさしい製品の消費にインセンティヴを与えるための基準であり、ISO14020〜14024番で規格化される予定です。なお、現在は次の3種類のラベルが検討されています。
タイプT
第三者機関の認証による環境ラベリング制度です。
製品のカテゴリーや認証基準をあらかじめ設定して、自主的な申請に基づき審査、認証を行いラベルの使用を認める制度です。
タイプU
企業がマーケティング活動の場で行う環境についての自己主張に関するもので、消費者が惑わされないよう、自己主張する場合のマークを統一するための規格です。
タイプV
製品の環境負荷を各項目ごとに定量化した指標を定め、データーとして資源利用量などを製品に表示するものです。
これは消費者が製品購入時に、その製品がどれだけ環境に負荷を与えて生産されたものかをわかるようにするための規格です。
環境監査とは、環境に関連した活動、状況、環境マネジメントシステムが、監査基準に照らして適合しているかどうかを判断するために、客観的に監査証拠を入手し評価した結果を監査依頼者(以下、監査主体)に報告する一連の検証プロセスをいいます。
(1)監査対象による分類
環境監査は、監査対象により次の3つに分類することができます。
@環境マネジメントシステム監査
環境マネジメントシステムが、組織が設定した環境マネジメントシステムの監査基準に適合しているかどうかを判断するための監査です。
環境マネジメントシステムとは、ISO14001の3.5によれば「全体的なマネジメントシステムの一部で、環境方針を作成し、実施し、達成し、見直しかつ維持するための、組織の体制、計画活動、責任、慣行、手順、プロセス及び手順を含むもの」をいいます。A環境パフォーマンス監査
環境パフォーマンスが、法令等で定められた基準あるいは組織が設定した基準に適合しているかどうかを判断するための監査です。
環境パフォーマンスとは、ISO14001の3.8によれば「自らの環境方針、目的及び目標に基づいて、組織が行う環境側面の管理に関する環境マネジメントシステムの測定可能な結果」をいいます。B環境声明書監査
組織の環境マネジメントシステム及び環境パフォーマンスについて記載した環境声明書が、事実に基づき適正に作成されているかどうかを判断するための監査です。
EU加盟国を中心として適用されているエコマネジメント・監査規則(EMAS)及び英国自治体のためのエコマネジメント・監査制度における公認環境検証人による、環境声明書の監査がこれにあたります。
(2)監査主体による分類
環境監査は、監査目的により次の3つに分類することができます。
@内部監査(第1者監査)
監査主体は組織の最高責任者で、自組織の環境配慮状況を検証し、その結果を環境配慮活動の継続的な改善に役立てるために行われる監査です。
監査実施者は監査対象から独立している監査主体の属する組織の構成員あるいは監査主体から委任された外部機関です。内部監査は、環境マネジメントシステムの1構成要素です。
国際商業会議所(ICC)が提唱している監査が、この第1者監査です。A第2者監査
監査主体が、監査をする権限を法律上、商取引上有する場合に行われる監査です。
一般的に、新規取引を行なう場合あるいは継続的に取引を行なううえで他社の環境マネジメントの状況が法令、監査主体の基準等に適合しているかを判断するために行われます。行政当局による企業の規制等への適合性を確める監査もこの分類に属します。
この場合の監査実施者は、監査主体である組織の構成員あるいは、監査主体から委任された外部機関です。
アメリカのスーパーファンド法の下での汚染浄化責任に関連し実施される土地、建物等の売買や金融機関の融資もしくは担保権の実行、あるいは企業のM&A実行に先立って行われる監査は、この第2者監査です。B第3者監査
認定機関により認定された独立の機関である審査登録機関により行なわれ、組織の環境マネジメントシステムが、ISO14001に適合しているかどうかを判断するための監査です。日本における認定機関は、財団法人日本適合性認定協会です。
ISO14001規格取得に際して行われる監査が、この第3者監査です。
5,世界および日本で環境マネジメントシステム(EMS)への取り組みはどのように行われていますか
1997年10月現在での各国の認証取得状況は次のようになっています。(工業技術院調べ)
日本:539(11月末)、イギリス:440、ドイツ:340、オランダ:230、韓国:153、スイス127、スウェ−デン:105、台湾:98、米国:83(11月末)、オーストリア:60
となっています。但しドイツではEMASの登録件数は、上記以外に928件あります。また日本の1998年1月末現在の取得件数は667件となっています。
ISO14001の規格が1996年9月に発行されたことを考えると、急速に普及していることがわかります。
ISO9000シリーズの場合、米国があまり熱心でなく、欧州を中心として規格取得が行われていましたが、ISO14001の場合は、全世界的に普及すると思われます。
ISOの規格は現在1万件以上ありますが、そのほとんどが製品規格です。製品規格としては身近なものとして直径やピッチを規定したISO(イソ)ネジ、フィルムの感度(ISO100、ISO400)などがありますが、これらは製造者が、規格に沿って製造し自主宣言しているものです。このような製品規格は、規格に適合しているか否かは使用してみると比較的に容易に判明します。しかしISO9000(品質保証システム規格)やISO14001(環境マネジメントシステム規格)のようなシステム規格に関しては、外部からは、その組織がシステム規格に適合しているか否かは容易に判断することができません。したがって、その組織が、システム規格に適合しているか否かを知りたい人々(利害関係者)に成り代わって第3者の人が確かめる(認証)必要が生じてきます。
そこで第3者による認証制度が確立されてきたわけですが、ISOに関しては、英国規格の認証制度にならって各国で整備されています。つまり各国に唯一の認定機関(民間の機関ですが国家が認めたもの)があり、この認定機関が、審査登録(認証)機関(民間・公共等どのような組織でも可)の認定を行います。認定をうけた審査登録機関が、実際の審査(認証)業務を行います。
日本においては、JAB(財団法人日本適合性認定協会)が認証機関(審査登録機関)の認定作業を行っており1997年12月19日現在、13機関が認定をうけております。
認証機関名や認定範囲(審査登録機関が審査できる業種の範囲)、連絡先等は、JABのホームページ(http://www.jab.or.jp/KAN/touroku.html)に最新情報が登録されています。
またこれ意外に、海外の認定機関(英国のUKAS、オランダのRvAなど)から認定をうけて、日本で活動している認証機関もあります。
環境監査研究会事務局
*転載は自由にできます Copyright EARG 1997